
夜が明けたばかりの砂浜を、男は走っている。
「どどうっ」と力強く打ち寄せる波の音は、
心臓のリズムと同じくらい、子どもの頃から聞きなれたものだ。
生まれたての太陽の光が、まばゆく輝いて男を包みこむ。
この町の朝陽は日本一美しいと、男は信じている。
九十九里浜が美しい曲線を描くこの町に、
金田康孝は生まれ育った。
そしていつしか、町の人たちが住む家をつくるようになった。
家を建ててくれた人たちみんなと友達になって、
どこへ行っても誰かと挨拶を交わし、
祭りの日にはみんな一緒に盛り上がり、
いざという時には助け合う、大きな輪をつくるんだ。
ロマンチストと呼ばれる男は、
ひたすら本気で、その夢に向かって走り続けている。

